樹木葬を考える

樹木葬を考える(3)

今回は、樹木葬に関する利点と問題点について述べたいと思います。現在、様々な形態のお墓がありますので樹木葬を検討されている方の参考になればと思います。最初に樹木葬は現在、大きな括りとして自然葬の一つに上げられています。時々、樹木葬と散骨を同じものと考えている方がいますが、散骨は、お骨をパウダー状に粉砕して海や山に撒きます。土に埋めないので行政による許可は不要です。私の知る限りほとんどが寺院の手の離れた民間の会社が行っているようです。陸から離れた海に散骨するならば問題ないと思いますが、陸で行っているケースでは、近隣住民とトラブルとなり、散骨を禁止する条例を制定した自治体も数か所あります。樹木葬は地面に穴を掘って埋めるため前回書いたように行政の許可が必要となります。基本的に石のお墓の霊園と同じ許可が必要となります。宗教法人でないとお墓の許可は出ませんので、一見、石材店が経営しているように見える霊園でも許可自体は、必ず寺院が取得しています。もしも石のお墓の霊園で区画を購入する場合は、どのお寺が許可を得ているのか確認することをお勧めします。「都市型樹木葬」の場合も同様です。「里山型樹木葬」の場合は、ほとんどがお寺が直営で行っておりますので誰が許可を得ているのかすぐに分かります。本題に入る前に下記からは、私の経営する市原南霊園を念頭に置いての話とします。樹木葬の良い所は、お骨をそのまま土(さらしの袋に入れて埋葬します。)に埋めるため自然に還ることができる点だと思います。人も自然の一部だと思いますので、いずれは土に還ることが本来の姿だと私は思います。散骨も自然に還ると言う点では同じですが、ご遺族がお墓参りしたい時にできなくなってしまう点が気になります。もっとも本人の意思で選択したのであるならそれを尊重すべきですが、残されたご遺族が時々お墓参りをして自分のご先祖に手を合わせることはとても大切なことだと思います。

今、私があるのは、間違いなくご先祖から受け継いだ命です。命を大切にすることは、ご先祖を尊重することにほかなりません。ご先祖を敬い、自分の命を大切に思うことができない人が、他の人の命も同じように尊いと思えるでしょうか。もっともお墓参りしなくとも命を大切に思うことはできますが、お墓の前で手を合わすと自然に命の尊さを再認識させられるのは事実です。できうるならどうすれば、残された人の心が癒されるのか良く考えてあげるのも先に逝く人の役割のように思います。

話しを戻しますが、里山型樹木葬の場合は、ほとんどの場合、樹木の生い茂った自然豊かな場所にあります。樹木や回りの風景を見て四季を感ずることができます。仏教は諸行無常を説きます。樹木や花の移り変わりや自然の中で吹く風を実感して少しでも仏教の説く諸行無常を利用する皆さんや自分自身が感じることができればと言う願いが、私が市原南霊園の樹木葬を始めることとした一番の理由です。また、残されたご遺族が自然を実感して少しでも心を癒していただければとも思います。天気の良い日に園内でお弁当を広げている方を時々見かけますが、その時が一番、私が樹木葬を始めて良かったと実感する時です。なんと言っても樹木葬のお墓は、お墓と言うよりも公園に近いので、園内でお弁当を広げても何の違和感もないところが一番良い点だと思います。

一方で問題点もあります。まず、交通の便が良くないことです。東京駅からバスを利用すれば、約1時間で市原鶴舞バスターミナルと言うバス停まで来れますが、そこから先はタクシーを10分程利用することとなります。意外に便利と思われるかもしれませんが、バスの本数が少ないです。またJRを利用する場合は、千葉駅から内房線の五井駅で私鉄の小湊線に乗継で上総牛久駅まで、乗継さえ良ければ1時間ほどですが、そこからバスかタクシーを利用して30分程かかります。バスが少ないためタクシーを利用することとなり料金が高いです。千葉駅から外房線の大原駅でいすみ鉄道に乗り換えて大多喜駅で降り、タクシーを利用し10分ほどで着きますが、料金は安く済みますが時間がかかります。車であればアクアラインを経由して市原鶴舞インターチェンジで降りて国道297号線を使用すれば、川崎あたりから1時間ほどで着きます。電車、バスを利用された場合は、事前に連絡いただければ都合のつく限り送迎させていただきます。以上は市原南霊園のことですが、里山型樹木葬の場合は、ほとんどが郊外にあるため交通の便が悪い場所にあります。

普通のお墓と違って樹木に囲まれた場所にありますので、基本的にお線香などの火気の使用は厳禁です。もしもお線香を使用したい場合は、普通のお墓でも使用していますが、金属製の箱に網が付いたお線香を横に置くタイプの容器を使用していただくこととなります。(ホームセンター等で買えます。)お参りされる方は、切り花を献花するかポットに入った一年草をお墓に植える方がほとんどです。

前述しましたが、お骨を土に埋めます関係から改葬(お骨を他のお墓に移す。)が難しいです。私の霊園では、区画の位置が分かる図面があり、区画ごとに番号で管理しています。埋葬した場所は区画を区分する杭からの距離を測って図面にしてありますので、改葬もできます。一番の問題点は、霊園全体の管理です。里山にありますので、定期的に草刈や草取りを行わなければなりません。管理費が不要な樹木葬もあるようですが、私の霊園では、管理費を頂いております。園内を見て見苦しくならない程度に草刈や草取りを行っています。草がボウボウなのは当然良くないですが、逆に過度に草を取ってしまうのも自然な雰囲気を壊してしまうと思います。また、草を取り過ぎると土砂が流出しやすくなるのと、夏に乾燥し易くなります。草刈や草取りのタイミングが難しいです。(草の防止と土の流出を防ぐために区画にリュウノヒゲを植えることをお勧めしています。正確にはタマリュウと言って自然の物と違いあまり背丈が高くなりません。)いずれにせよ、管理費を頂いておりますので、草ボウボウでどこが区画なのか分からなくなってしまうようなことはありません。以上、私が思いついた樹木葬の利点と問題点を書きましたが、一口に樹木葬と言っても様々なタイプがあります。もしも本当に樹木葬を希望されるならば、都市型タイプや里山型タイプも含めて、実際に何か所か見学し、比較検討してください。自分にあった場所が必ず見つかると思います。