前回までに何度も書きましたが、樹木葬の一番の特徴は、ご遺骨を土に埋葬して自然に還すことです。人は生きる上で様々な植物や動物の命を食事と言う形でいただいて生かされています。人がその一生を終えた時に土に還り、今度は他の植物や動物たちの糧となることは、自然なことであると思います。樹木葬に植えられた樹木の糧となり、その樹木が咲かせた花や実は虫や鳥たちの糧となります。
人だけが特別な存在ではなく、人も自然を構成する一部であります。
今回は、市原南霊園内に昔から生えている木、所謂、自生している樹木の主なものをご紹介します。自生している樹木で多くあるものは、コナラです。里山の落葉樹の代表と言える樹木です。昔、炭焼きやシイタケ栽培の原木で主に利用されていました。成長したら伐採し又15年から20年後に伐採し繰り返して利用していました。自然に生えて大きくなった樹木は1本立ちですが、人の手で伐採された樹木は株立ちとなります。霊園内の自生の樹木に株立ちが多いのは、人の手で伐採されていたからです。コナラは秋になるとドングリが実り、その実は鳥や動物のエサとなります。秋に黄色になる黄葉も綺麗です。
エゴの木も多く自生しています。6月頃にスズランに似た白い花が沢山咲きます。近くにいるとほんのりと甘い香りがします。花の蜜を求めてミツバチが沢山飛び回っています。秋に黄色に黄葉し、実が沢山成ります。ヤマガラと言う鳥がエゴの木の実を求めて盛んについばんでいます。昔、セッケンの木と言って、石鹸の代わりに実を利用していたようですが、木自体は、焚き木にするぐらいであまり利用価値がなかったそうです。山桜の木も多く自生しています。炭焼きで利用する他、なめこ栽培の原木として利用できます。4月上旬頃に花と葉がほぼ同時に開きますので、ソメイヨシノのような華やかさはありませんが、里山に咲く花はとてもよく目立ちます。花の後に結実し実は赤色から黒ぽい赤になります。鳥たちが集まってついばんでいましたので、私も食べてみましたがとてもまずいです。白樺のような樹皮をしている木は、ホウの木です。ホウ葉味噌で使用していますが、葉っぱの大きさに驚きますが、初夏に咲く大きな白い花はとても良い香りがします。最も驚くのは、実の形です。パイナップルを小さくしたようなギザギザの実が成ります。
ヤマボウシも自生しています。最近は、庭木として植えられていますので都会でも見ることがあると思いますが、初夏に咲く白の花は、手裏剣のような独特の形をしています。木の上の方に咲きますので、近くだと花に気付かないかもしれません。夏の終わり頃に熟する実は、小さなボール状で黄色から赤くなります。食べるとマンゴウのような南国のフルーツ系の味がします。秋になると赤く紅葉して綺麗です。花、実、紅葉と四季折々に変化しますので、庭木として植えられていることも頷けます。以上、樹木葬園内に自生している主な落葉樹をご紹介しました。
次に常緑樹です。一番多く自生している木は、スダジイです。葉が一年を通して濃い緑をしています。初夏のころは、若葉が少し黄色をしています。近くでは判りにくいですが、遠くの山々にあるものは、若葉が綺麗に見えます。秋には、とがったドングリが成って、食べることもできますがあまり美味しくないです。カシの木も多く自生しています。こちらも葉が深い緑色をしており、多く自生している場所では、木の根元に行くと薄暗く感じます。カミキリムシの幼虫がこの木が好きなようで、虫が入ったところは穴があいています。木肌の白い木はシラカシですが、この木は非常に堅いので虫が入りません。以上の常緑樹は、昔、炭焼きに利用していましたので、やはり株立ちで自生しています。自生する常緑樹の花は地味なものが多いですが、ヤブツバキの花は赤く目立ちます。早春の時期に咲きますが、花の蜜を目当てにしてメジロがよく訪れます。薄暗い場所でも花は付いていますが、やはり日当たりの良い所の方が多くの花を咲かせます。庭木として植えてある椿は、一本立ちのものがほとんどで株立ちは見かけませんが、里山のヤブツバキは株立ちになっています。
ヤマモモの木も自生しています。ヤマモモは、雄雌があって雌の木にしか実が成りません。実が赤く熟すと甘酸っぱくて美味しいです。生き物たちは熟する時を良く知っていて、熟すとあっと言う間に無くなってしまいます。あせびの木も自生しています。早春に白い花を咲かせます。葉に毒があるそうですが、花はかわいい形をしています。庭木として植えられているものはあまり大きくないですが、自生している木には驚くほど太いものもあります。以上が樹木葬霊園に自生している主な常緑樹です。前にも書きましたが、千葉県は暖かいので、落葉樹より常緑樹の植生が強いです。人の手を入れないで放置しておくとやがて常緑樹だけの林になります。霊園内は、落葉樹と常緑樹が程よい割合で育つように管理しています。