樹木葬を考える

樹木葬を考える(7)

数回に渡って樹木葬を作った目的について書きました。その一つに荒れた里山を再生して昔の美しい里山に戻して、お越しになった方たちが、景色や吹く風や鳥たちのさえずりを肌で感じて心を癒していただける様な場所を作りたい。大げさに言えば、私が寺の息子としてこの世に生を受けたのは、仏教の教えを広めるためであると思います。その一つに諸行無常と言う事を里山の四季を通してお伝えしたいと考えたと前回に書きました。住職である私が言うべき事ではないかもしれませんが、樹木葬のお墓を購入していただきたいと思っているのも事実です。里山を維持管理するにはそれなりの資金が必要です。また、墓地として行政から許可を得るためには、条例に基づく厳しい基準をクリアーしなければなりません。

もともと条例自体が石のお墓を想定しているため霊園の構造や施設に至るまで相当のお金がかかります。ですからお墓を購入していただきたいと思っているのは本音です。しかし、お墓を購入していただいたお金を私欲のために使おうとは考えていない事だけは断言して置きます。私が経営する市原南霊園は、株式会社や石材店が経営するお墓ではなく、私が七十七代目の住職になった大通寺直営の樹木葬霊園です。資料の請求のご依頼をいただいたり、ご見学いただいたとしてもこちらから営業の電話をかけたりすることは、一切行っておりません。お墓は、将来ご購入いただいた方たちが眠る所となる言わば第二のお家です。無理に勧めたりしたくないと思っているからです。樹木葬と言っても、前回にご紹介しましたように、現在は沢山の形式で行われております。私の行っている樹木葬霊園を本当に気に入っていただいた場合にご購入いただければ良いと思います。

私の所にも数回、お墓の購入を勧める営業の電話があり驚きましたが、生業として仕事として墓地の経営をされているなら営業することは大切なことです。電話はしませんが、私も広告やホームページで宣伝しておりますので一緒です。お墓を購入していただきたいと考えているのも同じです。しかし、単に私欲を満たすお金のためだけに霊園の経営をしているとしたら、私は住職として失格です。また、数百年に渡って仏教の教えを伝え守ってきた歴代のご住職方に顔向けできません。繰り返しますが、あくまでも「諸行無常」を実感していただきたい事が第一目的です。矛盾するかもしれませんが、お墓を購入しなくてもご覧になっていただくだけの方でも大歓迎です。自然の中で少しでも心癒していただければ良いと思います。そのためには、里山を美しく維持管理しなければなりません。私は毎日、泥だらけで作業していることが多いです。また、顔も日焼けして真っ黒です。(本当はもっと色白です。)最初にいらした方は住職だと思わないようです。お墓を購入していただいた方が、墓参にお越しの際に泥だらけの私を見て不愉快な思いをしていたとしたらお許しください。檀家の方の中には、半分冗談で「住職がそんなに日焼けで真っ黒なのはよろしくないぞ。」と言う人もいますが、私はある意味、暑い日も寒い日も泥だらけで作業することが与えられた使命であり、修行であると思っています。

話は変わりますが、樹木葬を始めて本当に良かったと思ったことは、沢山の人たちと新たに出会えたことです。私は20年ほど僧侶をしながら市役所に勤務しておりましたが、もしもそのまま勤務し続けていたら決して出会うことのなかった方々です。中には、本当に昔からの知り合いのようにお付き合いしてくださる方もいます。人と人との出会いほど不思議なものはありません。数年前まで全く知らなかった人と樹木葬を介して知り合いとなれたのです。もしかしたら、樹木葬を作って少しでも皆様に心癒していただければと思っていましたが、自分自身が一番に心癒されているような気がします。写真は霊園とする前の孟宗竹や笹が繁茂していた頃の様子です。孟宗竹や笹を片付けて道をつくり、なるべく元の里山を残すべく造成し、枕木を敷き、樹木を植えて寺の用事がない限り測量と道の舗装以外のほとんどの作業を自分で行いました。自分が納得できる樹木葬専門の霊園を作るには業者まかせでは出来ないと考えたからです。それまでの約20年間はほとんどの時間、机の上で事務をしていた者が草刈機やチェンソーで竹を切り、くわやスコップで土を移動させて、完成までに5年かかりました。業者に頼めば多分2年以内には完成していたと思います。自分自身では、納得のいく樹木葬霊園が出来たと思っています。私のすべての想いを込めた樹木葬霊園です。時々、見学にお越しの方が「綺麗なところですね。」とおっしゃってくださいますが、その時が一番うれしく思います。

一つ納得が行かないのが樹木葬霊園の価格です。自分で価格を決めておきながら、おかしな話かもしれませんが、本当はもっと安価で自然が好きな方であればどなたでも利用できることが理想です。「こんなに高いのですか。」と言われたこともあります。確かに高額だと思います。前述したとおりお墓としての許可を得るためには相当の金額が必要なためどうしてもそれなりの価格になってしまいます。市町村によって条例が違っており基準が厳しい所とそうでない所があるのはとても不公平に思います。厳しければ造成時にそれ相応のお金がかかります。お墓の周りに囲いをして、簡単な道を作っただけで許可が下りるならばもっと安価な値段で提供できたはずです。樹木葬をご利用したいと思っている多くの方にもっと安価な価格でご提供できればと考えていました。

ここから先は広告となりますが、今回、昔からある大通寺の墓地の一角に新たに安価な価格の樹木葬区画を作りました。墓地の一角ですからすべて自然の中にある樹木葬ではありません。(都会にあるような小さな区画の樹木葬です。)もともと墓地であった場所ですから平らな地形で造成にもあまり手間がかからず、また、墓地ですから許可を得るために新たに測量したり図面を作成せずに済みましたので安価な価格でご提供できます。ただし、先ほども書きましたがすべて自然の森のようにはいきませんでしたが、可能な限り周りに樹木を植えてご利用する方が、一時でも心休まる空間にしたつもりです。現在、4月上旬です。おそらく5月中には完成してホームページ上でご紹介できると思います。